4.山杜流腕時計選び方講座


 ここまで読んで頂いて,「そんならいっちょ腕時計でも身につけてみようかな」と感じてくれた方々にお送りする,山杜流の腕時計選び方講座です。特に腕時計初心者の方々にとっては,そんじょそこらの専門誌なんかより役立ちますよ!

 さて,いま専門誌の話題を出しましたが,はっきり言います。 「専門誌は役に立たない!」。 理由ですが,腕時計専門誌で扱っている腕時計の多くは海外ブランドでしかもマニアのための機械式腕時計ばかりだからです。間違っても初心者が手を出してはいけない時計達です。もちろんそういった時計を買うのは自由ですが,おそらく後悔します。高級な時計ほどデリケートで日頃のメンテナンスもしっかりやらなければいけませんから,腕時計のイロハをしっかり学んでからでも遅くはないのです。少なくとも山杜のような無精には手に負えない時計達であることは間違いありません。

 ではどういった時計を買えば間違いないのか?ズバリ言えば 国産時計メーカーのクォーツ腕時計 が文句なしにお勧めです。もっと具体的に言えばセイコー,シチズン,カシオあたりですね。これさえ守れば,あとは気に入ったデザインで買ってOKでしょう。

 では簡単に機械式とクォーツ式の違いを紹介します。本当に簡単な紹介ですので,詳しく知りたい方は腕時計専門サイトなどをご覧下さい。

機械式腕時計
 機械式腕時計とは,ゼンマイと歯車で動く,電気の力を借りない昔ながらの時計です。振り子式柱時計を腕時計のサイズにしたものと考えれば良いでしょう。ゼンマイの力で振り子にあたる「テンプ」と呼ばれるパーツを往復運動させ運針します。複雑なメカニズムをあの小さな腕時計に込めるわけですから,時計職人の熟練の技が必要になります。当然高額になることが多いです。機械式には竜頭を回してゼンマイを巻く「手巻式」と,腕の動きで内蔵のローターを動かしてゼンマイを巻く「自動巻式」があります。


 高額なブランド腕時計は殆どが機械式です。機械式は時計職人の心意気が伝わってきて愛着を持って使用できるのですが,取り扱いには神経を使います。日常的な手入れが必要です。ゼンマイと歯車で動いていますから,磁気にはめっぽう弱いです。精密機械ですから衝撃にも弱く,帰ってきて腕から外して戸棚の上に無造作に置く,なんて使い方ではまず駄目でしょう。ゼンマイ動力ですから電池切れの心配はないものの,2日も腕から外してゼンマイを巻かずに放っておけば止まります。しかも数年ごとにきちんと分解掃除(オーバーホール)しないと歯車が痛んで駄目になります。ここまで読んで「めんどくさい」と少しでも感じたならば,国産メーカーのものであっても機械式の購入は諦めましょう。

クォーツ式腕時計
 クォーツ式を簡単に言うと「電気で動くアナログ時計」です。クォーツ式を世界で初めて実用化したのは,日本のセイコーです。「クォーツ(Quartz)」とは日本語に訳すと「水晶」です。水晶を音叉の形に加工し,これに電気を加えると1秒に3万回という高速振動をします。この振動で運針を行うわけです。振動数が多いほど時計は正確に動きます。機械式のテンプの場合1秒間に10往復が限界ですから,クオーツ式がどれだけ狂いにくいかが分かると思います。


 水晶の振動には電気が必要ですから,当然電池が必要となり,電池が切れれば止まります。とはいえ,普通電池は2年〜5年は持ちますので特に気になりません。また電池が切れない限り,放っておいても止まることはありません。機械式よりもメカニズムが簡単なため,大量生産に向いています。したがって価格もリーズナブルにできます。メカニズムが簡単ということは,機械式のように腫れ物を触るような扱いでなくても大丈夫です。とはいえ,叩きつけたりとんでもない磁気に近づけたりしては駄目ですが。
 クォーツ式でもオーバーホールをするに越したことはありませんが,電池交換の際に時計屋さんに預ける時間の余裕があるのであれば,その際にパッキン交換と簡単な掃除をしてもらう程度でも充分だと思います。国産モデルを勧める理由は,オーバーホールや電池交換の際,どの時計屋さんに持ち込んでも安心だからです。

 これで山杜が国産クォーツ式を勧める理由がお分かりいただけましたでしょうか?外見のデザインは機械式とクォーツ式で違いがあるわけではありませんので(秒針の動きが多少違いますが),「機械式=良いデザイン」というわけではありません

 また,先ほどパッキン交換の話をしましたが,時計の防水性能というのも結構重要です。とはいえ,最近のクォーツ腕時計は10気圧防水以上のものが殆どですので,時計を着けたまま手を洗う程度のことは余裕です。流石に時計着けたまま泳いだりする人は専用のダイバー時計を買わないと駄目ですが(笑)。

 最近台頭してきている電波腕時計もクォーツ式の一種です。基本的にクォーツで運針し,1日に何回か電波を受信して誤差修正を行います。これでいつでも正確な時刻を表示するわけですね。電波で運針していると誤解をする方が多かったせいか,最近の電波時計は電池交換不要のソーラー式であることが多いです。狂わない,止まらない。ある意味理想の時計ですね。文句なしに初心者にお勧めです。

 あとは好みのデザインでお買い求め下さい。山杜はスポーティーなデザインが好きなので,どうしてもクロノグラフタイプが多くなってしまっています。使用頻度は低いのですが,あの小さな針が並んでいるデザインが格好良くてついつい選んでしまうわけですね。

 なお,デジタル腕時計に関しては,クォーツよりも磁気や衝撃に強いことを補足しておきます。歯車などとは無縁ですから当然ですね。デジタルが好きな人は使用環境をあまり気にせずとも良いと思います。ものすごく過酷な環境(工事現場でお勤めの方など)の方々には,Gショックしかお勧めできません。Gショックは力一杯床に叩きつけても壊れませんから安心です(表面に傷は付きますが)。

 初心者の腕時計選びはコレで間違いない!あとはネット上の時計屋さんのページでも覗いてみてください。きっとお気に入りの1本が見つかるはずです。

注意
 クォーツであっても,よくホームセンターのガラスケースで売っている安い時計はお勧めしません。あれらは時計メーカーの商品ではありません(聞いたこと無いメーカーばかりだと思います)。基本的に修理は不可で,電池交換も断られる場合が多いです。腕時計は使い捨てだと思っている人以外は,やはり時計屋さんで有名メーカーの腕時計を購入することをお勧めします。3万円〜7万円ぐらいの価格帯になるかと思いますが,良いものは永く使えますので,結果的に割安になりますよ!




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