「恐怖!カミングアウトツアー」


プロローグ

 山杜が北海道から去って幾年月・・・。夏休みに入ったにもかかわらず,仕事で身動きのとれない山杜を見かねてか,TakaTakuの2人が函館よりはるばる福島県の山杜の元に遊びに来ることになった。表面上は久しぶりの再会を果たそうというものだったが,実はその裏にはある計画があった・・・。名付けて「カミングアウトツアー」

 ここだけの話だが(もうすでに気づいていらっしゃる方も多いかもしれないが),山杜には本業にも差し支えるであろう,ある困った悪癖がある。当然,肉親にも到底話すことなどできやしない。なんとTakaTakuの両名は,山杜の実家を訪問し,それを山杜の親にバラそうというのである。まあ,冗談半分なのであろうが,もののはずみで口を滑らされては洒落にならない。「はずみ」にだけ注意して,山杜は2人を迎えた。久々の再会であり,2人にとっては初の福島県上陸である。


灼熱の再会

 午後3時20分頃,山杜の携帯が鳴った。郡山駅に着いたから迎えに来て欲しいとのこと。予定が狂って仕事が午後まで長引いていた山杜は駅で待ちかまえることができず,急いで愛車セレスを走らせて駅へと向かった。5分後,何とか駅に着いた山杜「暑い」を連発する2人と感動の(?)再会を果たした。北海道から来た人間には,福島県の温度&湿度は相当堪えたことだろう。かくいう私も,6年ぶりの暑さはかなり効いているのであるが・・・。兎にも角にもエアコンの効いた車に乗り,山杜の部屋へとひとまず向かった。

 山杜の部屋へ着き,荷物を下ろしてひとまずくつろごうとする2人。しかし衝撃の事実が!!なんと,連日30度を超える猛暑であるにもかかわらず,山杜の部屋にはエアコンがなかったのである。それどころか扇風機さえない。ケチな山杜は冷房器具を全く購入しておらず,暑さを我慢して生活していたのだ。北海道からの客にはさすがに堪えるだろうと思った山杜は,「あとで扇風機を買いに行ってくる」と言ったのだが,ここでTakaより「エアコンぐらい買えよ!」とクレームが付いた。しかし山杜には全くその気はなかった・・・だってエアコン高いんだもん・・・。


福島名物へGo!

 残っている仕事をやっつけている山杜を眺めながら,山杜が振る舞ったオロCのパチモンを飲んで今後の予定を話すTakaTaku。2人が「喜多方ラーメン食いに行くぞ」と言い出した。近所で晩飯を食べようと思っていた山杜は困惑した。

「喜多方ってこの近くじゃねえぞ」

「どのくらい?」

「高速使って1時間ぐらいかな」

「近い近い」

さすが北海道民。車で1時間は「近い」のである(詳しくは前回の内輪ネタ「運び屋」を参照)。「車出してもらう代わりに晩飯代をおごる」ということで,3人はセレスに乗り込み一路喜多方へ向け出発した。


ザ・原爆頭突き磐越道からのぞむ磐梯山

 喜多方へ向かう途中,山杜は全くと言っていいほど金を持っていないことに気づいた。「わりい,ちょっと銀行寄ってくるわ」と2人を車内に残し,道路沿いにあったT銀行のATMコーナーに金をおろしに行った・・・ここまではよかった。おろした金を財布にしまいながら,銀行を出ようとしたそのとき,悲劇は起こった。

 山杜の身体(正確に言えば額から目にかけて)に,轟音と共にものすごい衝撃が走った。「ぐおうっ!」何が起きたか分からず,声を上げてよろめく山杜。よく見てみると,前方がガラスで仕切られていたのに全く気づかず,正面衝突したのだった。笑いをこらえる他の客。いや,笑っている客もあきらかにいた。まるでお笑いコントそのままの状況に,そそくさと銀行を出る山杜であった。

 車内に帰った山杜の左眉部分は,ものの見事にたんこぶができていた・・・。2人に笑われたのは言うまでもない・・・。

 その後,痛みをこらえながらも高速道路を140〜150km/hでかっ飛ばす山杜。窓の外の磐梯山を眺める2人をよそに,冷たい缶ジュースでたんこぶを冷やすべく,パーキングエリアをひたすら目指す山杜であった・・・。


人気キャラクター登場!?

 パーキングエリアで休憩を入れた3人は,会津若松インターを抜け一般道へ。喜多方へ向け北上した。ふと気づくと,前を走っていたのは白の180SX最新型。車にもそれなりに詳しい3人は,「新しい180ってやっぱり格好悪いなあ」「なんかいまいちだな」などと話しながらその後をついていった。すると突然,その後ろ姿を見ていたTakuが一言つぶやいた。

「なんかたれぱんだみたいだな」

「・・・・・・おお〜っ!!」

白の180SX最新型の後ろ姿は「たれぱんだ」そっくりであることに気づいた3人であった。かえすがえす写真を撮っておかなかったのが悔やまれる。みなさんも是非ご確認いただきたい。

確認する


全国区?喜多方ラーメン

 山杜は数年ぶりに走る喜多方市内に戸惑いながらも,何とか以前食べたことのあるラーメン屋に到着した。札幌の「ラーメン横丁」のような風景を想像していた2人にとっては意外だったようだが,喜多方のラーメン屋は市内あちらこちらに点在している。

 余談だが,山杜の弟は高校時代を喜多方で下宿しながら過ごしている。その弟曰く,「TVや雑誌等で紹介されているラーメン屋はそれほどでもない。実際,行列ができている店の隣に建っているラーメン屋の方がうまかった」そうである。そんなわけで,2人をつれていった店は,その弟お墨付きのラーメン屋であった。

 Taku曰く山杜が好きそうな名前の店」に入った我々は,その店自慢のチャーシューメン(喜多方ラーメンは当然「醤油」である)と餃子を注文し,店の壁に掛かっている有名人のサインを眺めながら,北海道のそれと比べると遙かにあっさりしたラーメンに舌鼓を打った。TakaTakuのラーメンの評価はとりあえず良かったようで,「第1の目的をクリアした」と語っていた。


行方不明のTaku

 喜多方市内の閉店間際の電気屋で3000円の扇風機を購入した我々は,再び高速に乗り,旧友の話に花を咲かせながら郡山へと戻った。あとやることと言えば「酒盛り」しかない。福島県ではおなじみの大手スーパーでツマミを購入し,内部店舗の酒屋でビール,日本酒,ワインを調達した後,山杜の部屋へ。最近仕事に悩みを抱えている山杜を励ましたりイビったりしながら,久々の楽しい酒盛りが続いた。しかし,北海道から来た2人には,熱帯夜は相当堪えた様子で,扇風機をフル稼働させても,まだ暑さをしのげないようであった。もし後5分遅くて,扇風機を買った電気屋が閉店していたら・・・。時間的に考えて他の電気屋もきつかっただろうし,本当に助かった。これまでの山杜はひたすら我慢の一手で,寝るときも寝汗をたっぷりかきながら根性で眠っていたのである・・・。

 酒盛りも一段落つき,次の日も仕事で朝の早い山杜は一足早く眠りについた。TakaTakuの2人は,次の日の福島観光の予定を立てていた。そしてどのぐらい眠っただろうか。深夜2時頃,トイレに起きた山杜は,Takuがいないことに気づいた。隣の布団で寝ているのはTaka1人だ。「あれ?」と思いながらも便意には勝てず,寝ぼけ眼でトイレへと向かった。すると,バスルームの明かりが煌々とついているではないか(山杜の部屋はバス・トイレ別)。「今頃風呂入ってんのか?」と思った山杜は,Takuぅー,風呂かー?」と呼びかけた。しかし返事がない。おかしいと思ってバスルームの扉を開けてみた山杜は愕然とした。そこには湯の入ったバスタブに横になって眠っているTakuの姿があった。

「おーい,おぼれるぞー!」

「ん?あぁ・・・寝てた・・・」

危なく自分の部屋から溺死者を出すところだった。トイレに起きて良かった。などと思いながら,用を足した山杜は再び布団に戻り,深い眠りへとついた・・・。

 午前5時,目覚まし時計の音で目の覚めた山杜は,本日行われる研究会の提出資料を作るべく,パソコンに向かおうとした・・・が,異変はまだ続いていた。Takuがまたいない!!「今度は便所か?」と思った山杜は,トイレへと向かった。そこで山杜が見たものは,相変わらず煌々と電灯がついたままのバスルームだった。「まさか・・・」まさかは的中した。一度起こしたにもかかわらず,Takuはまだ同じ体勢のまま眠っていたのである。一晩バスタブの中で寝ていたとは・・・恐るべしTaku。よく溺れずにいてくれた。ありがとう,Taku。もはや賞賛すら覚える山杜であった。


次回のお楽しみ・・・?

 さて,ツアー2日目であるが,この日は案内役をしなければならないはずの山杜が研究会に出席しなければならなかったため,TakaTakuの2人はレンタカーを借りて福島県観光に出かけた。残念ながら山杜はその詳しい経過が分からないため,ここは省略させていただく。いつかこの話は,TakaTakuのどちらかの手により書き起こされるかもしれない。その日を待つことにしよう。


根性の焼肉

 結局2日目は,3人が合流できたのは夜8時近くであった。レンタカーを返した我々は,晩飯をとるべく食べ放題の焼肉屋に向かった。焼き肉屋に入る前に,その店の近くのパソコン屋を物色。昨日の酒盛りの最中,Takuより中古のデジタルカメラを購入した山杜は,早速その店でスマートメディア&メディアリーダーを購入。準備を万端にした。Takaも増設メモリを購入。ほんのちょっとひやかしに入ったつもりが,思わぬ高額買い物となった。

 道草を喰ったおかげでさらに腹の減った我々は,いよいよ焼肉屋へと突入した。空腹からか,バイキング形式の肉を山のように皿に盛る3人。肉の他に寿司やうどん,果てはアイスクリームまで置いてあるその店を「ザ・ワールド思い出すな」などと評しながら,機関銃のような勢いで肉を食べ始める3人であった。

 悲劇はほぼ腹も満たされた頃に起こった。何気なく壁の張り紙に目をやる3人。そこには「食べ残しは1皿につき500円頂きます」と書いてあった。人間,腹が減っているときには,いくらでも食べられそうな気がするものである。しかし今は満腹。満腹時の料理ほど気持ち悪く思える物はない。我々は根性で肉を胃に押し込み,細かい肉片は焼き網の下に落とすことにより,何とかその場を切り抜けた。さあ,店を出ようと言うことになったが,そこには別腹とばかりにスイカをむさぼり食う山杜の姿があった・・・。だってスイカ好きなんだもん・・・。

 満腹になり,部屋に戻った我々は,昨晩と同じように酒盛りをしながらインターネットなどを楽しみ,眠りについた。幸いこの日は,Takuも風呂場で寝ることはなかった・・・。


会津観光?

 ツアーも3日目,いよいよ佳境である。この日も早朝より仕事だった山杜は,寝ている2人をそのままに出かけた。午前10時半ごろ戻ってきた山杜は,起きていた2人と共に支度をし,いよいよツアー最終目的地へ向け出発した。最終目的地とは・・・言うまでもなく山杜の実家である。

 ボーナスが出たというのに,まだ母親にプレゼントを買っていないことを思い出した山杜は,実家に帰る前にプレゼントを購入すべくパソコンショップに向かった。ちょっと待て,母親へのプレゼントに何故パソコンショップなんだ?と思われるかもしれないが,それでいいのである。確かに母親へのプレゼントといえば,洋服やアクセサリー,花などが一般的であろう。しかし山杜の母親はひと味違う。現在iMacを使ってDTPを極めるべく,日夜奮闘中なのである。iMacにシリアルポートがないことに困っていた母親に対して,山杜は強化パーツ「iDock」を購入。プレゼントすることにした。

鶴ヶ城と山杜  その後,先日頭をぶつけた銀行を横目に見ながら高速道路に突入し,会津に向けひた走る一行だったが,最終目的の前に会津観光をしようということになり,まずは猪苗代へと立ち寄った。山杜にとっては見慣れた会津磐梯山や猪苗代湖の風景だが,2人にとっては北海道の自然とはまた違った,新鮮な風景であったようだ。

 そしてTakuの強い要望により,一行が向かった場所は「野口記念館」。我が郷土の誇り,日本人なら誰でも知っているであろう「世界のNoguchi」こと野口英世博士生誕の地である。山杜にとってもここを訪れるのは何年ぶりであろうか。福島県の人間である以上,野口英世博士については,小学生のときには強制的に伝記を買わされたりして,十分に学んできたつもりであったのだが,改めて野口博士の偉業を実感させられた結果となった。展示品に熱心に見入るTaku。彼にとっての野口英世とはどんな人物なのだろうか。

 心を学術的気分で満たし,野口記念館を後にした一行は,時間的余裕と天候上理由(今にも雨になりそうだった)から磐梯登山を断念し(Takuだけは最後まで登りたそうだった),猪苗代湖畔を見物した後,会津若松へと車を進めた。渋滞に巻き込まれながらも何とか鶴ヶ城(会津若松城)に到着した一行は,戊辰戦争でその若い命を絶った白虎隊に想いを馳せた。実は鶴ヶ城は,山杜が高校時代を過ごした下宿の目と鼻の先にあり,山杜にとっては思い出の地である。そう来たら見に行くしかないっしょ!というわけで,車窓からではあったが山杜が高校時代を過ごした下宿屋を見物し,その足で山杜の出身高校へと向かった。記念にと写真を撮るTakaTaku「ここで山杜は目覚めたのか・・・」という一言に,恐怖の瞬間が近づいてきているのを実感する山杜であった・・・。


ついに訪れた?カミングアウトの瞬間ほぼフル装備?iMac(グレープ)

 会津若松を後にした一行は,いよいよ目的の地,山杜の実家へと向かった。どんどん山の中に入っていくセレス。山をひとつ越えふたつ越え・・・。運転する山杜の横で,旅の疲れからか眠っている2人。いっそこのまま郡山へ引き返そうか・・・そんな想いが山杜の脳裏によぎる。しかし,その勇気のない小心者山杜であった。

 会津若松から車で約1時間・・・山の中の人口2500人の小さな町。山杜の生まれた町にセレスは到着してしまった。築50年(改装は含まない)は経とうかという古い家,それが山杜の実家。しかし駐車場には何故かインプレッサWRXが停まっているというアンバランスな家に,ついに3人は足を踏み入れた!!山杜の母が待ちかねたように出迎え,TakaTakuに麦茶とお菓子を勧める。2人とも流石聖職者と呼ばれる職業。ここは礼儀正しく挨拶である。そのまま,大学時代の話など,たわいもない話に花が咲く。話を合わせながらも山杜は,いつあの禁断の話題が飛び出すかと内心冷や冷やしていた。

 話がひと区切りつき,ついにTakuが口を開いた。ここまでか!!思えば短い人生だった・・・。

 そう腹をくくった山杜だったが,その瞬間,起死回生の手段が残っていたことを思い出した!

「あ,忘れてた。これボーナスでたからプレゼント。iMacのパワーアップパーツだよ」

そう言ってiDockを取り出した山杜。ついでにTakuがMacのパワーユーザーであることを紹介し,話は一気にMacの内容に。そのままiMacへiDockを取り付け,メンテナンスを行う作業へとなだれ込んだ。かろうじて操を守った(笑)山杜であった。いや〜,危なかった・・・。


爆走!インプレッサWRX

IMPREZA SEDAN WRX  iMacメンテナンスを終えた一行は,そろそろ郡山に戻ろうということになった。だがその前に,折角だから国内5ナンバー最速の呼び声も高い,インプレッサWRXを運転してみないかという話になり,早速試乗に出かけた。なにを隠そうこの車,山杜の母(年齢55)の愛車である。一体どんなおばちゃんなんだ?と思って下さって結構である。しかし紛れもない事実なのだ。

 田舎故に車通りは少ない。山の上を通るバイパスにて,早速アクセルを踏み込む山杜。水平対抗エンジンの音にターボ音が加わり,一気に加速するWRX。サードギアでタコメーターがレッドゾーンに入る頃,スピードは140km/hを越えた。運転を交代したTakaも同様に加速してみる。スピードはあっという間に150km/h!狂喜乱舞するTaka「面白い!これは欲しいわ」を連発していた。どうやら彼の愛車インテグラSiR−Gの誇るVTECエンジンでさえ味わえない加速感に酔っていたようである。Takuに至っては,加速のみにとどまらず急旋回などをも試み,WRXの走りを満喫していたようだ。

 一通り「田舎の暴走族」を終えた3人は,山杜の実家の前で記念撮影をし,WRXに比べると遙かに遅いセレスに乗り込んで山杜の実家を後にした。iMacとインプレッサWRXのおかげで,何とかカミングアウトツアーを不発に終わらせることができた。感謝すべきは母の所有物ということかな・・・。


エピローグ

 帰りの車内は,WRXの話でもちきりだった。Takaはいまだ興奮さめやらぬ様子で,「いやー,面白かった」を連発していた。その後,郡山に着いた一行は,最後の酒盛りをし,また近いうちの再会を約束して眠りについた・・・。

 翌朝,TakaTakuの2人は,新幹線で帰っていった・・・が,再び彼らがこの地を訪れるとき,もしかしたらみっつKeitaが加わって,4人で来襲するかもしれない。そのときこそ真のカミングアウトツアーが行われるのではないだろうか。今回はあくまでジャブ(下見)にすぎなかったのかもしれない。そう考えると,再会は果たしたいものの,次回はあって欲しくないような,複雑な気持ちになる山杜であった・・・。

続く・・・のか?

(文責:山杜一平 多少フィクションあり)


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