【全日本の音響について】


 先日,1月16日に札幌で行われたみちのくプロレスの興行を見て参りました。 大変みちのくらしい興行で,楽しんで帰って参りました。全日本の話題を取り扱うこのコーナーで, みちのくの話をしようというつもりはありませんが,今回,みちのくを観戦して, 改めて考えた全日本の問題点について書きたいと思います。

 全日本の試合だけを観戦していると気づきませんが,他団体と比較するとすぐ分かります。 全日本は,音響の分野に全くと言っていいほど力を入れていないということです。 全日本は,音響設備を自前で用意せず,会場となる体育館の設備をそのまま利用していると思われます。 首都圏の会場(武道館や後楽園ホールなど)は,良い設備が整っていると思われますが, 地方の会場となるとそうはいきません。比較的新しい会場ならまだしも,古い会場となると, 設備には期待できません。あまりよくない設備で,アナウンスや入場テーマを流すとどうなるか, もうおわかりでしょう。

 札幌中島体育センターは「北の聖地」などと呼ばれていますが,実際にはボロです。 北海道以外のファンの方には以外かも知れませんが, 数々の伝説を生み出してきた会場である札幌中島体育センターは,とても古い会場なのです。 厳密にいえば,新しい体育館もあるのですが,それは「本館」の方です。雑誌・新聞等をよく見ると, 必ず「札幌中島体育センター別館」となっているはずです。プロレスの興行が借りることができるのは, 「別館」だけなのです。本館の新しさに不釣り合いなほど,別館はボロ体育館です。

 そのボロ別館,音響設備もろくなものではなく,入場テーマを流すと,音がこもっている上, 音が割れています。耳障りだと感じることもしばしばです。ところが,みちのくの興行は, 音響設備持参でした。ステージ上に巨大なスピーカーが設置され, 音がクリアな上に響き具合も抜群でした。会場内に響きわたるみちプロのテーマは,迫力こそあれ, 決して耳障りと感じることはありませんでした。全日とは大違いです。 全日本も音響機器を持参すればいいのに・・・と改めて思いました。

 また,全日は今時といったらなんですが,入場テーマにカセットテープを使っているのだと思います。 個人で聞いているのではなく,あくまで大勢の観客に聞かせるための音楽なのですから, 既成のものはCDを,オリジナルや合成のものはMDを使用してほしいものです。 このメディアの違いは,音質の違いは言うまでもありませんが, 勝者のテーマが流れるタイミングにもつながってきます。 2つのテーマを用意しておいて,試合が決した瞬間,勝者側のテーマを流しますが, カセットテープにはどうしてもブランク部分があるため,音楽が出るまでちょっとかかるんですよね。 新日本の試合なんか見てると,すぐ音楽が出るでしょう?みちプロもすぐ出ました。 まあ,このブランクによるタイムラグはさほど大きな問題ではありませんが, 重要な音質の面から考えて,カセットテープだけはやめてほしいですね。

 おそらく,全日本の,そして馬場社長の方針としては,「飾りっ気はいらない。試合内容で勝負だ」 というものがあるのだとは思います。確かに正論です。全日本の興行は地味ですが, 試合内容のクオリティの高さは,誰もが納得するところです。 豪華な装飾など無くても,ファンをうならせることができる,それが全日本プロレスです。
 私はスキー,スノーボードをたしなみますが,そのときの持論は「格好より中身で勝負!」です。 下手なくせに,ウェアやスキー板ばかり豪華な奴ほどみっともないものはありません。 私は,そのスポーツをやるために必要な最低限の格好で, おかしくない格好さえしていればいいと思っています。
 しかし,プロレスの入場テーマというものは,この「最低限」に入ると思うのです。

 プロレスで格好いいシーンのひとつが入場シーンです。レスラーが自分の入場テーマに乗って, リングに歩を進めてくるシーンは,観客を熱くさせます。ここではレスラーはもちろんのこと, 入場テーマも大変重要な要素です。入場テーマは,レスラーのイメージにつながります。 例えば,三沢が「スパルタンX」以外のテーマで入場してきたらどうです? 想像つかないでしょう?それは「スパルタンX」の曲調が三沢のイメージそのものだからです。 川田はやはり,どことなくもの悲しさのある「Holy War」が似合いますし, 田上は「ECLIPSE」のダイナミックさが,熱血小橋は闘志みなぎるあの曲「SNIPER」以外ないでしょう。

 ある意味レスラーの顔とも言える入場テーマがお粗末だったらどうでしょう? せっかくいい曲を使用していても, 音質がひどければ,入場シーンが台無しになってしまいかねないと思うのは私だけでしょうか。
 全日の会場でも聞いた新崎人生のテーマ,そのときは別に何も感じませんでした。 しかし今回,みちのくのすばらしい音響設備で聞いた人生のテーマは,迫力があって感動しました。 新崎人生に対するイメージがより深まった気がしました。

 私は別に,新日本のような華やかな装飾をしろと言っているのではありません。 それをやってしまったのでは,全日本の色が薄れてしまいますから,それは望んでいません。 ただ,より多くの観客により多くの感動を与えたいなら,音響効果は重要ではないかと思うのです。 もっとクリアで響きの良い全日レスラーのテーマが流れる中,手拍子を打ちながらコールをしたい, と思っているファンは多いはずです。

(文責:山杜一平)


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