いよいよ年の瀬も押し迫って参りました。そこで,今年の全日本プロレスの総決算を,私なりの見解でや ってみたいと思います。あくまで私の見解ですので,「雑誌なんかと違うじゃないか」と言わないようお願 いします。
まず,シングルマッチベスト3から。
第1位 小橋健太 VS 馳 浩 (8/26 札幌中島体育センター)
何も言うことはありません。とにかく凄い試合でした。戦前は「馳のブランクを考えると小橋が勝って当
たり前」などということも言われてましたが,蓋を開けてみればとんでもない。どっちが勝ってもおかしく
ない試合でした。
とにかく馳の渋いテクニックが爆発。「これがレスリングだ」と言わんばかりに小橋を
追い込んでいく様子は,伊達に新日でトップクラスを張っていたのではないという自信が溢れ出ていました。
実際,雪崩式裏投げからのノーザンライトで決まったかと思いました。が,そこは底なしのスタミナを誇る
小橋。何とか跳ね上げると,あとはそのスタミナに物を言わせて,30分を超えたところで回転ケサ切り
チョップ3連発からの熱血剛腕ラリアットで吹っ飛ばし,勝ちを収めました。馳は初めて30分を超える
試合をしたのではないでしょうか。しかし,「馳,健在」をありありと感じた試合でした。
今年一番の夢のカードだったと言えるでしょう。これからは,このカードが「夢」ではなく,日常的なも
のになっていってほしいものです。このカードを三冠戦を押さえて1位に持ってきたのは,やはり,会場で
じかに見たことが大きいです。やはり,TVで見るより,じかに見た方が,生の迫力が伝わってきますよね。
私の中では,文句無しの第1位です。
第2位 三冠戦 王者 小橋健太 VS 挑戦者 三沢光晴 (1/20 大阪府立体育会館)
「同一カードなら10月の三冠戦の方が凄かったじゃないか」という声も聞こえてきそうですが,私に
とってはこちらの試合の方が印象深いのです。
まず,王者が小橋で挑戦者が三沢だという点です。まさかこのような状況が生まれようとは。小橋が
「善戦マン」と呼ばれていた時代を知る者としては,実に感慨深いものがありました。実際,試合中も
三沢の防衛戦だと思ってしまうほど,小橋が王者だという事実は信じ難かったです。
そして試合内容。もうこれ以上はないんじゃないか,というものを見せてくれました。私はこの試合を
ビデオで録画して,後日ゆっくりと見ていましたが,「うぉー!」「すげぇー!」「そこまでやる!」と
いう声が止まりませんでした。小橋のエプロンからのパワーボムを三沢がウラカン・ラナで返したとき,
私がこの試合1番の大声を張り上げたのですが,上の階の住人に「うるさい!」と怒鳴り込まれた程です。
ビデオ録画で,結果も分かっていた試合ですが,それだけ興奮したということです。
さらに,この試合,三沢がタイガードライバー91とタイガースープレックス85を両方出したにも
関わらず,小橋は返しています。この2つを出して決まらなかった試合を,私は初めて見ました。改めて
小橋のスタミナ,精神力を思い知らされました。そして最終的にその小橋を葬った三沢。感服致しました。
第3位 三冠戦 王者 三沢光晴 VS 挑戦者 川田利明 (6/6 日本武道館)
チャンピオンカーニバル優勝決定巴戦で三沢を破った川田が,「真の三沢越え」をねらったこの試合。
「スタミナの切れた三沢を倒しても・・・」という声を断ち切るためにも,負けられなかった試合です。
しかし結果は・・・。心なしかこの試合後,川田に元気がなくなったように感じたのは私だけでしょうか。
田上,小橋は1日1試合の場で三沢から勝利をあげています。この事実が,川田にはプレッシャーと
なっていたのではないでしょうか。
しかし試合は,三沢−小橋戦とはまた違った素晴らしいものでした。昨年は行われなかった三沢−川田の
三冠戦。とても久しぶりに感じたのと同時に,やはりこのカードは必要不可欠だ,とも思いました。私の
友人(全日本観戦歴15年)に,「全日最高のカードは,やっぱり三沢−川田の三冠戦だよ」といって譲ら
ない人がいます。確かにこの2人の戦いには歴史があります。三沢−小橋戦では超えられない部分があるのかも
しれません。
敗れた川田の「川田−三沢戦のブランド,分かってくれたと思う」というコメントが印象的だった一戦
でした。
次に,タッグマッチベスト3。
第1位 世界タッグ 王者 川田・田上組 VS 挑戦者 小橋・エース組 (5/27 札幌中島体育センター)
なんか今年は,あまり世界タッグが熱い試合にならなかった印象があるのは私だけでしょうか。ウイリ
アムス・オブライト組といった「大味コンビ」がベルトを保持していた期間があったことが原因の1つだと
私は考えています。
ともあれ第1位のこの一戦,これも私が会場で見たカードなので,お許し下さい。パトリオットの去就
問題の最中,コンビ復活となった小橋・エース組。この時点では残留だったパトリも含めてGETを結成
して臨んだ世界タッグ。結果は見事王座奪取となりました。
試合はほとんど川田・田上組のペースでしたが,小橋,エースの「是が非でも!」という執念が勝った
ように思えます。田上のダイナミック・ボムで決まったかと思いましたが,エースが単独で返しました。
以前のエースだったら,返せなかったでしょう。最後は,小橋が剛腕ラリアットで田上からピン。丁度
小橋が走り込んでくる真正面に座っていた私には,凄い迫力でした。今年の世界タッグの中では,1番熱い
試合だったと個人的には思います。
このときは,GETの順風満帆な船出を,私は確信していました。しかし・・・。カムバーック!!
パトリオットォー!!
第2位 最強タッグ公式戦 三沢・秋山組 VS ウルフ・スミス組 (11/15 後楽園ホール)
最強タッグ開幕戦で起きた大波乱,と言っても過言ではないでしょう。しかし,何かが起きそうな予感は
ありました。この試合を2位としたいと思います。
今年後半になって大ブレイクした「いぶし銀」ジョニー・スミスと,この日からラクロスより変身「バーチャ
ファイター」ウルフ・ホークフィールド。ひょっとしたら何かやってくれるのでは・・・という期待に応え,
なんと優勝候補相手に引き分け。全国のファンをうならせました。
やはりスミスの力が大きかったと私は思います。大型の選手が多い全日マットにおいて,テクニシャンな
選手はやはり貴重です。テクニックで相手をキリキリ舞いさせる,そういった選手がタッグに置いてポイン
トゲッターのサポートをしたら,これほど強力なものはありません。もしこの試合が,ハンセン・スミス組
だったら分からなかったと思います。
一方のウルフも,シリーズ終了の頃には,だいぶ板に付いてきた感がありました。いわば子どもたちの
ヒーロー的なキャラクターを手に入れたのですから,これからが楽しみですね。何はともあれ,この試合
でもぎこちなさはあったものの,いい仕事をしていたと思います。
それにしても,スミスはGETとTOP,どっちに入るんでしょうね。
第3位 世界タッグ 王者 川田・田上組 VS 挑戦者 オブライト・高山組 (3/1 日本武道館)
ついに世界タッグに他団体の選手が!!私個人としては,この試合,別に世界タッグにしなくても良かった
ようにも思います。全日の選手みんな,納得いかなかったんじゃないでしょうか。スポット参戦の他団体の
選手が,世界タイトルに挑戦するんですから。小橋なんか,世界に挑戦できるまで,あんなに苦労したのに
・・・。話題性も手伝って,3位にしました。
世間の目は,川田と高山の絡みにいってましたが,私個人は,田上と高山の絡みに期待していました。
自分の団体では,自分に匹敵する大きい選手と当たったことのない高山が,田上と向かい合ってどうだ
ろうか,と考えていました。
結果,やはり田上は強かった。高山をジャーマンでぶん投げたとき,「やはりダイナミックTだ」と
感じました。武道館に見に行った友達は,「あれで高山はふらふらになってた」と言っていました。
高山も,また参戦する機会があるのなら,川田ばかりでなく,他の選手ともどんどんやってほしいものです。
それにしても,この試合オブライトの影が薄かったですね。
全日の試合でレフェリーストップって,珍しいですよね。三沢の肩脱臼と,小橋−キマラ戦ぐらいしか,
私は記憶にありません。
以上,私なりの観点からシングル,タッグのベスト3を振り返ってみました。今年は他団体選手の参戦や
新軍団の結成など,何かと話題の多い年ではありました。来年はドーム進出の話やTV中継1時間復帰の
噂もあり,また話題の多い年になりそうです。しかし,話題だけでなく,全日本の基本的な部分も見せて
いってほしいと願うのは私だけでしょうか。来年も選手の皆さん,明るく,楽しく,激しく,頑張って下
さい。
97年の全日本プロレスの話題はこれにて終了させて頂きます。それでは皆さん,良いお年をお迎え下さい。
(文責:山杜一平)